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名古屋地方裁判所 昭和48年(行ウ)11号 判決 1977年11月14日

原告 株式会社魚吉商店

被告 豊橋税務署長

訴訟代理人 松津節子 太田健治 ほか二名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一申立

(原告)

一  被告が原告に対し、

1 昭和四六年一二月二四日付でなした、昭和四四年二月五日から同年六月三〇日までの事業年度の法人税更正処分並びに過少申告加算税賦課決定処分

2 同日付でなした、昭和四四年七月一日から同四五年六月三〇日までの事業年度の法人税更正処分並びに過少申告加算税賦課処分

をいずれも取消す。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求めた。

(被告)

主文と同旨の判決を求めた。

第二主張

(原告)

請求原因

一  原告は被告に対し、昭和四四年二月五日から同年六月三〇日までの事業年度分(以下「係争第一事業年度分」という)の法人税について、欠損金額二〇六、四五九円、法人税額〇円とする青色申告をしたところ、被告は昭和四六年一二月二四日付で原告に対し、貸借対照表において計上されている清算人仮受金二、六五二、四三一円については昭和四四年三月二六日清算人が債権放棄をしたと認められるから、その債務免除益を益金に加算し、金二、四四五、九七二円を所得金額の計算上益金に算入するとして、所得金額〇円、法人税額一〇二、三〇〇円とする更正処分をなし、あわせて過少申告加算税額五、一〇〇円を賦課決定した。

二  また、原告は被告に対し、昭和四四年七月一日から同四五年六月三〇日までの事業年度分(以下「係争第二事業年度分」という)の法人税について、所得金額七六二、八九五円、法人税額四一八、〇〇〇円とする青色申告をしたところ、被告は昭和四六年一二月二四日付で原告に対し、前記係争第一事業年度分の更正処分にともない繰越欠損金当期控除額二、六五三、六八一円が過大になるとして、所得金額三、四一六、五七六円、法人税額一、一〇五、八〇〇円とする更正処分をなし、あわせて過少申告加算税額三四、三〇〇円を賦課決定した。

三  しかし、被告のなした本件課税処分は、所得の算定を誤る違法なものであるから、その取消を求める。

(被告)

請求原因に対する認否

請求原因第一、二項記載の事実は認める。

被告の主張

一  原告会社設立の経緯

原告会社は、従前、商号を株式会社龍松園(代表取締役は中島葭太郎。以下「龍松園」という)と称し、本店所在地を豊橋市北島町字北島一六一番地とし、花き、そ菜、果樹その他温室における栽培および販売を主たる事業目的とした株式会社であつた。その後右龍松園は、昭和四二年一二月二七日解散決議を行ない、清算整理(清算人は中島葭太郎)に入つたが、昭和四四年二月五日に至り、会社の継続をなすとともに、その本店を豊橋市萱町一四番地に移転し、事業目的を鮮魚類の卸売業に変更した。さらに昭和四四年三月二六日に至り、龍松園は、豊橋市萱町一四番地に本店を有し鮮魚類の卸売業を営む合資会社魚吉商店(代表者は乾実。以下「魚吉商店」という)を吸収合併して、同時に株式会社魚吉商店に商号変更し、翌月一三日代表取締役に乾実が就任したものである。

二  所得金額の算定

係争各事業年度分の更正所得金額の算定内訳は次のとおりであるが、これを表に現わすと別表記載のとおりである。

1 係争第一事業年度分について

原告は、係争第一事業年度分の法人税につき、欠損金額二〇六、四五九円とする確定申告書を提出した。

しかし、原告は同事業年度において、清算人仮受金二、六五二、四三一円を不当計上しているのでこれを否認し、これは債務免除益計上もれとして申告所得金額に加算されるべきである。そうすると、原告の繰越欠損金控除前の所得金額は、二、四四五、九七二円となる。

一方、原告は同事業年度において法人税法五七条該当の欠損金を繰越しているので、これは同条一項本文により同事業年度の損金に導入されるのであるが、その繰越欠損金の額は三、三六七、二五一円であつて、繰越欠損金控除前の所得金額二、四四五、九七二円を超えるので、同項但書により繰越欠損金三、三六七、二五一円のうち二、四四五、九七二円を、繰越欠損金の当期損金算入額として、繰越欠損金控除前の所得金額から控除することになる。

以上によれば、原告の同事業年度の所得金額は〇円となる。

なお、法人税法六七条により、原告には課税留保金額一、〇二四、〇〇〇円があるので、これに対する税額は一〇二、三〇〇円となる。

2 係争第二事業年度分について

原告は、係争第二事業年度分の法人税につき、繰越欠損金控除額前の所得金額四、三三七、八五五円、繰越欠損金当期控除額三、五七四、九六〇円、差引所得金額七六二、八九五円とする確定申告書を提出した。

しかし、右繰越当期欠損金控除額三、五七四、九六〇円には二、六五三、六八一円の過大がある。すなわち、前項記載のとおり、係争第一事業年度の原告申告所得には二、六五二、四三一円の脱漏があるから、係争第二事業年度の申告書記載の繰越欠損金額には二、六五二、四三一円の過大計上が存し、加えて同申告書記載の繰越欠損金額の計算自体に一、二五〇円の過大違算が存する。この繰越欠損金控除額過大二、六五三、六八一円は申告所得金額に加算されるべきである。

以上によれば、原告の係争第二事業年度の所得金額は三、四一六、五七六円となる。

なお、法人税法六七条により、原告には課税留保金額一、四三三、〇〇〇円がある。従つて、原告の係争第二事業年度分の法人税額は一、一〇五、八〇〇円となる。

三  債務免除益とする主張

係争第一事業年度の確定申告書記載の清算人仮受金二、六五二、四三一円(以下「本件清算人仮受金」という。)を不当とし、これを債務免除益とみるべき理由は次のとおりである。

1 本件清算人仮受金は、龍松園が解散時である昭和四二年一二月二七日現在債務超過であつたことから、清算人中島葭太郎が自己の責任において同会社の資産・負債を弁済整理し、整理後の債務超過額二、六五二、四三一円につき、同人が同額の清算人仮受金債権を取得したというものである。

しかし、右債権は、中島葭太郎が、既に解散し、資産皆無となつていた休眠会社(龍松園)から回収することのできる余地は全くないものであり、同人はこれを免除することにしていたもので、会社の帳簿上名目的な清算人仮受金として決算処理されていたものである。もともと龍松園は中島葭太郎の完全な同族会社であり、同人が自ら経営する温室園芸栽培を法人の形式で営んでいたに過ぎない。同人は解散により龍松園から事業および資産・負債の全部を引継いだが、これは、実質的には法人の形式による事業経営を個人に戻しただけであつて、同人は引受けた債務も当然のごとく自己の責任で弁済整理したのであり、引き継いだ資産・負債は計算上債務超過となつていたが、同人はこの債務超過額を龍松園に請求する意思はなく、その金額は引継ぎ時点で債務免除または債務放棄がなされていたとみるべきである。

以上のとおり、本件仮受金清算金は、休眠会社である龍松園に名目上残されていたもので、実体のないものであつた。

2 ところが、この清算人仮受金は、魚吉商店が休眠会社龍松園に合併するという変則的な合併形式をとることにより、原告に承継され、形式上乾実が中島葭太郎から債権譲渡を受けたものとして、原告の負債に計上されたのである。

この段階で、休眠会社の名目的な負債勘定に過ぎなかつた本件清算人仮受金とそれに見合う繰越欠損金は、実体のある原告の正規の決算に計上され、負債として税務計算上直接影響を及ぼすものとなつた。

3 そのため被告は、原告の本件清算人仮受金を、税務計算上は実体のないものとして否認するとともに、それに見合う繰越欠損金を減額する必要を認めたのである。

そこで被告は、本件清算人仮受金が当初から債務としての実体を有しないものではあるが、合併日まで龍松園の負債として継続して計上されてきた経緯にかんがみ、本来債務としての実体がない本件清算人仮受金が税務計算上意味があるものとなつた時点、すなわち合併実行の日を含む事業年度の初日に清算人から債務の免除があつたものとみなしてこれを更正処分したもので、何ら違法はない。

4 仮に、中島葭太郎が龍松園から資産・負債の全部を引継いだ時点で債務免除または債権放棄がなされたとみることができないとしても、龍松園の「跡始末」が終了した時点で右債権は消滅していた。

すなわち、中島葭太郎は、龍松園の清算終了の登記がなされないままになつていたので、公認会計士足立為人に対して会社の「跡始末」を依頼したところ、「清算終了登記などに費用がかかるので会社を五万円で売つてはどうか」ともちかけられた。そこで中島葭太郎は、これで会社の「跡始末」はすべて終ると判断し、債権譲渡の意思など全くなく、債務免除または債権放棄するつもりでこの申出を承諾したものであり、その結果、足立為人は昭和四四年二月五日に龍松園の継続登記手続を行なつた。

要するに、中島葭太郎は龍松園を売ることにより清算はすべて終るものと判断して足立為人の申出による処理を依頼したもので、少なくとも、その処理を完了した日即ち「継続登記の日」において債務免除またに債権放棄が行なわれ、債権が消滅したものである。

(原告)

被告の主張に対する認否

一  被告の主張(会社設立の経緯)の事実は認める。

二  同二(所得金額の算定)の事実のうち、原告が被告主張の如き内容の各確定申告書を提出したこと、係争第二事業年度分に一、二五〇円の繰越欠損金の計算違いがあつたことは認めるが、原告が係争第一事業年度に清算人仮受金二、六五二、四三一円を不当計上していること、係争第二事業年度に繰越欠損金控除額二、六五三、六八一円(但し、一、二五〇円を除く)の過大計上があることは否認する。仮に、右被告主張事実が認められるときは、法人税法五七条該当の繰越欠損金額および同法六七条該当の課税留保金額がいずれも被告主張額とおりとなることは争わない。

三  同三(債務免除益の主張)は争う。

原告の反論

一  本件清算人仮受金たる債権は、中島葭太郎が債務免除ないし債権放棄をした事実はなく、魚吉商店の代表者乾実が昭和四四年二月五日右中島葭太郎から譲渡を受けたものである。右両者間には、債権譲渡契約書も作成されて譲渡がなされている。中島葭太郎が債務免除ないし債権放棄したとみるべきであるから清算人仮受金は存在しないとの被告の主張は、事実にもとづかない独自の意見にすぎない。

二  被告は、かつて本件更正の通知書において、「清算人仮受金二、六五二、四三一円については、合併実行の日でもつて、清算人はその債権を放棄していると認められますので、債務免除益として益金に算入します」とその更正理由を明示していた。青色申告の場合の更正においては更正理由の附記が義務づけられていることからして、その争点は右更正理由の当否にしぼられ、拘束されて争われるべきである。しかるに、被告は、合併実行の日まで清算人仮受金の存在していることを認めていた態度をひるがえし、本訴において、清算人仮受金の不存在を主張するものであつて、このように更正決定に附記された理由と異る事由を主張することは許されない。

また、本件清算人仮受金が昭和四四年二月五日以前に既に不存在であつたとするならば、訴外龍松園の確定申告に対して、まずもつて更正しなければならないはずであり、原告の本件係争第一事業年度分として更正することは許されない。

第三証拠<省略>

理由

一  請求原因第一、二項の記載の事実(本件課税処分の内容、経緯等)については、当事者間に争いがない。

二  原告が本件係争第一事業年度(昭和四四年二月五日から同年六月三〇日まで)分の法人税につき、欠損金額二〇六、四五九円とする青色申告による確定申告書を提出したところ、被告が原告の計上した本件清算人仮受金二、六五二、四三一円を否認し、これを債務免除益として計上して更正処分したことは当事者間に争いがない。原告はこれが不当であると主張するので、この点について判断する。

<証拠省略>を総合すると、次の事実を認めることができる。

1  原告は、株式会社龍松園と合資会社魚吉商店とが昭和四四年四月二八日に合併登記されてできた株式会社である。

2  右龍松園は、中島葭太郎が昭和二七年七月一〇日、本店所在地を豊橋市北島町字北島一六一番地とし、温室園芸栽培を事業目的として、資本金五〇万円で設立した同族会社である。中島葭太郎はその代表取締役として経営に従事してきた(合併前頃は、同人の息子である中島康兵衛がその一切を取り仕切つて中島葭太郎を代行していた。)が、経営が不振となり、昭和四二年一二月二七日累積赤字が三、三六五、六〇一円に達したため、これを解散(清算人中島葭太郎)し、龍松園芸栽培の個人経営に移すとともに、龍松園の資産負債の全部を個人に引継いだ。

3  龍松園の解散日現在の決算書類によれば、貸借対照表の資産合計五、五一〇、九四二円に対し、負債合計八、一五八、九七三円で差引合計二、六四八、〇三一円の債務超過であつた。

龍松園の決算事務を委任された税理士田中義孝は、同会社の昭和四二年一二月二七日から同四三年六月三〇日までの間の決算書を作成したが、同人は右債務超過額を中島葭太郎が引継いだものとして、同債務超過額二、六四八、〇三一円と同期間の欠損金(県市民税)である一、二五〇円、合計二、六四九、二三一円を中島葭太郎の龍松園に対する債権として「清算人仮受金」という名目で計上処理した。なお、昭和四三年七月一日から同四四年二月四日までの間に欠損金三、一五〇円が加算されて、帳簿上の欠損金合計額は二、六五二、四三一円となつた。

中島葭太郎および康兵衛は、右解散後龍松園の債務を弁済整理したが、龍松園はもはや資産皆無の会社であるから、右清算人仮受金相当額の債権を同会社に請求する意思はなく、将来清算終了と共に消滅すると考えていた。ところが、登記簿上だけ存在する会社であつても県市民税等の諸費用がかかつてくるため、昭和四四年初頃この法人の跡始末を公認会計士足立為人に依頼した。

4  他方、合資会社魚吉商店は、昭和二八年一二月二五日に設立され、本店所在地を豊橋市萱町一四番地、事業目的を鮮魚類等の販売等とし、代表者を乾実とする会社であつた。

右乾実は、魚吉商店を株式会社に組織替えすることを希望し、昭和四三年末頃から同四四年初頃にかけてその手続を前記公認会計士足立為人に依頼していた。

5  そこで、足立為人は、帳簿上繰越欠損金を有し、清算中の株式会社である前記龍松園を利用して、魚吉商店を株式会社に組織替えし、同時に株式会社となつた魚吉商店に節税の利益を与えることを考え、中島葭太郎、康兵衛および乾実の了解をえて、その一切の手続をとつた。

すなわち、足立為人は、魚吉商店の代表者乾実が龍松園の全株式を譲受け、中島葭太郎の帳簿上有する債権二、六五二、四三一円を乾実に譲渡する旨の債権譲渡契約書を作成し、昭和四四年二月五日付で龍松園を会社継続すると共に本店を魚吉商店の所在地である豊橋市萱町一四番地に移転し、事業目的を鮮魚類の販売等に変更する旨の登記を同月一九日に了し、さらに昭和四四年四月二八日、右龍松園が魚吉商店を吸収合併し、同時に商号を株式会社魚吉商店と変更する旨の各登記を了した。

なお、昭和四四年二月五日乾実の息子である乾一郎が株式会社龍松園の代表取締役に就任し、同年四月一三日乾実が同会社の代表取締役に就任した。

6  中島葭太郎、康兵衛と乾実は右合併の前後を通じて一度も会つたことすらなく、一切の手続を足立為人に委せていたものであつて、右合併手続は魚吉商店を株式会社に組織替えするために書類上なされただけであり、また同様に、清算人仮受金たる債権の譲渡契約書も納税決算事務のための書類として作成されたにすぎないものである。

かくして、魚吉商店は、その実体は従前のまま株式会社に組織変更されて原告会社となり、一方株式会社龍松園は名実共に消滅するに至つた。そして、本件清算人仮受金二、六五二、四三一円は原告の決算書類上、負債として計上され、存続することになつた。

以上の事実を認めることができ、証人足立為人、同石井秀典の各証言および原告代表者本人尋問の結果中、右認定に反する部分はいずれも措信することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

右の認定事実によれば、合資会社魚吉商店は休眠会社である株式会社龍松園を利用して会社合併の法形式により株式会社に組織替えしたものであり、株式会社龍松園はこれによりその清算を終了させたものである。また、中島葭太郎および康兵衛はその龍松園に対する清算人仮受金相当の債権を会社の清算終了と共に消滅させることにしていたのである。従つて、右清算人仮受金たる債権は、右龍松園の消滅と共に、中島葭太郎および康兵衛の債務免除ないし債権放棄によつて消滅したものとみるべきである。そして、その消滅の日は、遅くとも、龍松園と全く関係のない会社である株式会社魚吉商店に変更登記がなされた昭和四四年四月二八日とみることができる。

そうすれば、原告が係争第一事業年度分に本件清算人仮受金二、六五二、四三一円を計上したことは不当であり、同事業年度分の更正において、被告がこれを債務免除益として益金に加算したことは相当であつて、違法はない。

なお、原告は、被告が更正処分の附記理由と異なる理由を主張することは許されない旨主張するけれども、被告が本訴において主張するところは右附記理由と実質的に同一であるから、原告の右主張は採用し難い。また、原告は、債務免除が係争年度以前になされたものであるならば、係争年以前の年度分につきまず更正すべきであつて係争年度分について更正することは許されない旨主張するけれども、係争年以前に生じた事由であつても係争年度の所得金額に影響を与え、その金額を誤らせる事由があるときは、係争年度分につき更正すべきは当然であつて、原告の主張は失当である。

従つて、係争第一事業年度分の更正について、債務免除益の加算不当をいう原告の主張は、すべて理由がない。

三  次に、原告は、本件係争第二事業年度(昭和四四年七月一日から同四五年六月三〇日まで)分の法人税について、所得金額七六二、八九五円とする青色申告による確定申告書を提出したところ、被告が原告の計上した繰越欠損金控除額三、五七四、九六〇円のうち二、六五三、六八一円を過大として更正処分したことは当事者間に争いがない。原告は、右のうち一、二五〇円については過大違算であることを認めるが、その余の二、六五二、四三一円は不当であると主張する。

しかしながら、前項で判示したとおり、係争第一事業年度分の清算人仮受金二、六五二四三一円は不当計上であつて、原告の申告所得には同額の脱漏があつたものであるから、係争第二事業年度の確定申告書記載の繰越欠損金額には右同額の過大計上が存することになる。従つて、右繰越欠損金控除額過大分二、六五三、六八一円(清算人仮受金二、六五二、四三一円と繰越欠損金過大違算一、二五〇円の合計額)は申告所得金額に加算すべきものであり、係争第二事業年度分の更正は相当であつて、原告の主張は理由がない。

四  原告は係争第一事業年度分につき欠損金額二〇六、四五九円、法人税額〇円とする確定申告書を提出しているところ、本件清算人仮受金二、六五二、四三一円が不当計上であるから、原告の所得金額は二、四四五、九七二円となる。ところが原告は同事業年度分として法人税法五七条該当の繰越欠損金三、三六七、二五一円があることは当事者間に争いがないので、右所得金額二、四四五、九七二円から同額の欠損金を控除されることになり、原告の同事業年度の所得金額は〇円となる。しかし、原告には同事業年度分として法人税法六七条該当の課税留保金額一、〇二四、〇〇〇円があることは当時者間に争いがないので、これに対する税額は一〇二、三〇〇円となる。

次に、原告は係争第二事業年度分につき所得金額七六二、八九五円、法人税額四一八、〇〇〇円とする確定申告書を提出しているところ、繰越欠損金二、六五三、六八一円の過大があるから、原告の所得金額は三、四一六、五七六円となる。そして、原告には同事業年度分として課税留保金額一、四三三、〇〇〇円があることは当事者間に争いがないので、原告の同事業年度分法人税額は一、一〇五、八〇〇円となる。

従つて、右と内容を同じくする本件各更正処分は適法であり、また、各過少申告加算税賦課処分にも違法な点はない。

五  以上の次第であつて、原告の本訴請求は理由がないから失当として棄却することにし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決した。

(裁判官 藤井俊彦 窪田孝夫 山川悦男)

別紙<省略>

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